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大人の階段

雑記

大人の味の代名詞といえば、コーヒーとビールである。子どもにとって、どちらも「苦いもの」の代名詞ではなかろうか。少なくとも私の場合はそうであった。

 

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親戚などの集まりで、よく子どもたちにビールを飲ませ、その苦そうな顔を楽しむおじさんがいた。なんだって大人はこんな苦いものを飲むのだろう、と子ども心に思ったものである。

コーヒーも然りである。缶コーヒーからコーヒーの世界に入った私は、長いことコーヒーに砂糖やミルクを入れて飲んでいた。ブラックで飲むものではない、と決めてかかっていたものである。

 

ところが、そのふたつの飲み物は、今となっては私の大好物である。飲み会では、周囲が焼酎やサワーに切り替えようが、生ビールを延々と飲み続ける。

コーヒーはもちろんブラック。アイスコーヒーも当然ブラックで飲む。美味しいコーヒーには目がない。

 

そうなってしまった経緯がある。

 

まずはビール。

晴れて成人となり、父親とお酒を酌み交わした時のこと。父親とビールの話題になった。正直、成人になったものの、当時ビールの苦味にはまだ慣れておらず、父親に聞いてみた。

「なぜ大人は、こんな苦いものを飲むの?」

「う〜ん、ビールは確かに苦いな。大人が飲んだって、そりゃ苦いさ。でもその苦味がいいんだよ」

「なぜ苦味がいいの?」

「ビールが苦いからこそ、食べ物の旨味が引き立つんじゃないか」

 

?!

 

この答えが私のビール人生を一発で変えてしまった。

なんという明快な答え!しかもビールの悲しさ!何と、ビールは主人公にはなれず、食べ物を引き立たせるためだけに自らを苦くしていたのか!

それからビールが好きになってしまった。もっとも、今は食べ物はなくとも、ビール自体の味もいつからか好きになってしまい、父親の言葉もちょっと違うのではないかと思っている。

 

次にコーヒーである。

ミルクと砂糖を入れた、甘いコーヒーを飲んでいた私に、ある日、上司が注意した。

「そんなんじゃ、コーヒーの本当の美味しさなんてわかんないわよ。コーヒーはね、味じゃなくて香りを楽しむの。下ではなくて鼻で味わうのよ。そんな風に飲んでみなさい」

果たして恐るおそるやってみると…。

なんと?!

今まで知らなかった、痺れるような香りが、口の中から鼻を通していっぱいに広がっていく!! 

 

 

かくして、私は大人への階段を登っていったのである。